みやびの杜 京都スタジアム推進委員会

みやびの杜・京都スタジアム推進委員会シンポジウム
「スタジアムで地域力を」

2006年2月21日 キャンパスプラザ京都 2Fホール


登壇者のプロフィール(敬称略)
登壇者のプロフィール(発言順)
left 横山 勝彦 同志社大学 法学部教授
1954 年生まれ。同志社大学経済学部卒業。京都教育大学教育専攻科修了。 現在の専攻はスポーツ政策論。 主な共著は、「スポーツの法と政策」(ミネルヴァ書房)、「身体運動のアスペクト」 (同和書院)
left 柱谷 幸一 京都パープルサンガ 監督
1961年京都生まれ。京都商業高校、国士舘大学を経て、1983年日産自動車(現 横浜F・マリノス)入団。 浦和レッズ、柏レイソルと1996年までフォワードとして活躍。 1981〜1987年日本代表として国際Aマッチ33試合出場4得点。 2000〜2001年には、日本サッカー協会でU-20 以下の強化を担当 2001年からの3シーズンはモンテディオ山形で監督を務め、 2004年J2第18節より京都パープルサンガ監督に就任。 昨シーズンはチームをJ2優勝させJ1昇格を決める。
left 大倉 治彦 月桂冠株式会社 代表取締役社長
1958年京都生まれ。1981年、一橋大学経済学部卒業。株式会社第一勧業銀行勤務を経て、1987年に月桂冠株式会社入社。1997年、代表取締役社長に就任。 (社)京都経済同友会常任幹事、京都経営者協会常任理事、(社)京都工業会理事、京都府酒造組合連合会会長
left 真山 達志 同志社大学 政策学部学部長
1955年生まれ。中央大学法学部・同大学院法学研究科卒。専攻は、行政学・地方自治論。 著書に「政策形成の本質−現代自治体の政策形成能力」、共著に「政策開発」、「スポーツの法と政策」などがある。


横山 
Jリーグの百年構想を実現するためには、行政のリーダーシップ、 企業の参画、市民の意識統一の全てが必要となります。

そのシンボル・求心力となりうる存在が、スタジアムではないでしょうか。 私は縁あって、数年前から研究会・シンポジウムなどを開催し、京都の スポーツ文化の発展について話し合いを重ねてきました。

その結論として、新しいスタジアムを建設することを考えるのが良いのではないか、 ということになりました。

スタジアムという存在が、サッカーやパープルサンガという存在は抜きにして、 果たしてどういう役割を果たすことができるのか、あるいはどういう意義を持つのかを 今もう一度考えてみたいと思います。


柱谷 
私は現場の立場からスタジアムの必要性を皆さんと共に訴えていきたいと考えています。 今日は、選手あるいは監督としてこれまで国内外のさまざまなスタジアムを実際に経験してきた 感想をもとに話をしたいと思います。

私が日産(現:横浜F・マリノス)に所属していた時代はまだ日産スタジアムが無く、 球技専用スタジアムの三ツ沢競技場を使用していました。

専用スタジアムは、陸上トラックのあるスタジアムに比べて、プレーする楽しさが格段に上でした。 スタジアムのスタンドがピッチに合わせて四角くなっているのがプレーしやすかったです。

浦和時代に使用していた駒場スタジアムは、陸上トラックがあります。 駒場スタジアムで1万人に囲まれてプレーするよりも、三ツ沢競技場で500人の観衆の中で プレーしている方が、ピッチとスタンドが近くプレーしやすかった記憶があります。

柏時代はサッカー専用スタジアムでした。 柏スタジアムはピッチとスタンドの距離が日本一近く、臨場感が素晴らしい。 ゴールを決めた後のサポーターたちの歓喜がダイレクトに伝わってくる。

それに比べて、西京極は日本の中で最低レベルのスタジアムだと思う。 Jリーグの監督は単年契約なのに、私がこれほどスタジアムの問題や若手の育成などに力を入れているのは、 京都出身で京都に対する思い入れが強いからです。

横浜や浦和のようなビッグクラブではなくてもいいので、それよりもたとえ小さくても良いクラブを作りたい。 京都の子供たちに、サッカー専用スタジアムで観るサッカーの楽しさを感じてもらいたい。 3年後には松井や朴が京都に帰ってきて、新しいスタジアムで優勝争いをすることを夢見ています。


大倉
私はパープルサンガの後援会に所属しており、また大学までずっとサッカーをしていたこともあって、 現在でもサッカーには想いがあります。 2001年に横山さんやJリーグの川淵チェアマン(当時)とシンポジウムなどでスタジアムに関してはお話を したことがあります。

日本の社会には元来、国や地方がやるべき仕事を企業が行っていたという風土がありました。

仕事だけでなく、スポーツや休日の過ごし方まで、全て企業が面倒を見ていた。 しかし、バブル崩壊後はそのような風土もなくなってきました。

企業ではなく、地域に根付いたスポーツを実現するのがJリーグの理念です。 民間の企業がスタジアムを持つと、企業の業績がスタジアムの運営に直接影響するため、 企業の業績が悪化すればつぶれてしまいます。 そうでなくとも、スポーツ面よりも企業の利益を優先しなければならないということになり、 結局はスポーツが地域に根付かないことになってしまいます。

京都は長い歴史を持っているが、京都の伝統や風習も全てが最初から根付いていたものではありません。 これから新しくスポーツ文化を京都に根付かせていきましょう。


真山 
地域社会における「合意形成をなす」には、3つの流れが存在します。 それは、問題の流れ、政策の流れ、政治の流れです。

スタジアムの建設を求めて 30万人以上の署名を集められましたが、これら賛成派の意見を集めるだけでなく、 反対派の意見も聞き、反対派を納得させることが必要となってきます。

「合意形成をなす」といいながら、実際は「合意調達」になってしまうことが多い。 「合意調達」は、進行の途中で問題が起こった後に合意を得ようとすることです。

早い段階で、賛成派、反対派の全ての意見を吸い上げて、双方が納得できる状態を作り上げることは 時間がかかり、回り道に見えるかもしれないが、途中段階で反対がでたり行き詰ったりすることが少ない という点で利があります。

新しいスタジアムを作るには、反対派や周辺住民との合意形成が必要不可欠であり、 賛成派が強引に進めていくだけでは良くありません。


横山
柱谷氏と大倉氏には新スタジアム建設に関してイケイケ派の立場から、真山氏にはより客観的な 立場から話をいただきました。ここからは、会場の意見を聴いていきたいと思います。

会場
以前、京セラの稲盛会長の提案で、新スタジアムを横大路に作る案と西京極に作る案があったがどうなったのか?

横山
具体的な場所に関する意見も皆さんお持ちでしょううが、本日はそれらの踏み込んだ内容ではなく、 スタジアムの意義などの観点で話し合いをしたいと思いますのでご了承下さい。

会場
真山氏の話に、合意形成をなすための3つの流れのお話があったが、現状の京都はどのような段階にあるとお考えか?

真山
一番の大きな問題は政治の流れと言えます。 税金を使ってスタジアムを作るとなると、少ない資金を使って建設するからには 反対派も含めた全ての人の合意が必要となります。
政治家は、自分を支持してくれる人の数に敏感であり、積極的には動きません。 政治家以外の誰かが引っ張ることで、流れを作っていかなければならないと考えられます。
政策の流れに関しては、みやびの杜を始めとしてさまざまな話し合い、意見交換の場ができつつあり、 良い流れに向かっていくのではないでしょうか。

横山
お金の問題は、スポーツ界全体で共通の課題と言えます。 単純な費用対効果の面ではなく、スポーツの感動や文化としての価値といった側面からも訴えていく 必要があるのではないでしょうか。

政治の流れは、誰かが引っ張らなければならないとおっしゃっいましたが、では誰が作るべきでしょうか?

真山
それは難しい問題です。 自治体レベルの流れを作るためには、市民の盛り上がりが大きな影響力を持ちます。 お金の問題は、経済界がどれだけ目を向けてくれているかが大事になってきます。 バックアップするという言葉だけでなく、より具体的にどのようにバックアップするのかを明確に 示す段階まで踏み込まないと、進んでいかないでしょう。

大倉
経済界の皆さんを説得し、協力してなんとかサポートしていきたいと考えています。

横山
市民もサポーターも もっと1人1人が意見を言える立場にいるということを自覚することも重要でしょう。

柱谷
バルセロナのソシオのようになれば、上手くまわって安定経営のクラブにできるのですが。

横山
京都はなぜそうなっていかないのでしょうか?

柱谷
西京極はスタンドとピッチが一番遠い最低なスタジアムです。 選手と客の距離が物理的にも心理的にも非常に遠い。 専用スタジアムで観るサッカーの素晴らしさをもっと知ってもらいたい。 地元にプロのサッカークラブがあることの幸せも感じて欲しいです。

会場
色々な地方のスタジアムを見てきたが、西京極はやはりスタンドとピッチの距離が遠い。 また、スタジアムが地域に与える影響はことのほか大きいと感じました。
日本は野球文化が根付いています。 京都は国際文化交流都市であり、サッカー文化が根付くこと、サッカーの存在が大きくなることは インパクトが大きいはず。
プロチームがある都市である、という事実をみんなが利用できるように考えていって欲しいです。

会場
福田電子アリーナを訪ねたときに感動しました。 あのスタジアムはネーミングライツなどの工夫で資金を調達していました。 京都と違って使える土地が広く、埋立地なども利用できる点はうらやましく感じています。 京都は、もっと市民の盛り上がりと政治への働きかけをするべきではないでしょうか。 柱谷氏にもロビー活動などを頑張っていただけるとありがたいです。

会場
京都パープルサンガのサポーターとして日産スタジアムに行ったときに、 陸上トラックがあるので観づらく、スタジアムとしての魅力がないと感じました。
普段サッカーを観ない人には、スタジアム建設の話が存在することすら知らない人も多いと思います。
まだ京都は合意調達しかできない段階にあるのですが、夢を広げるために、クラブ、市民はそれぞれ 何ができますか?

柱谷
京都は広報が難しい土地です。 地元にテレビのキー局がないことがネックの1つとなっています。 これからはクラブとしてTV出演などでもっとアピールしていきたいと考えています。 サンガは、ハーフタイムに監督だけでなく選手にインタビューすることも提案していきたい。

会場
浦和はもともとサッカーどころであり、サッカーが根付いています。 それに比べて、京都はまだまだサッカーの知名度が低い。 試合の告知の数も少ない。 河原町や京都駅でももっとアピールして、1人でも多くの人に生で観戦してもらえるように努力すべきです。 スポンサーデーなどをもっと行うと、観客が集まりやすいと思います。

柱谷
もっとメディアの露出を増やさないといけないと思っています。 去年、J2を独走したにも関わらず、観客は増えませんでした。 試合観戦者の中にリピーターをもっと増やすためにはどうすればよいかと考えると、 やはり良いスタジアムが必要であると感じます。

大倉
スポンサーデーなどの活動はこれからも地道に続けていくべきだと考えています。

会場
スタジアムの建設は府と市のどちらに投げかけるべきでしょうか? また、スタジアムができたときには運営は誰がすべきでしょうか?

真山
府と市のどちらかを選ぶとするならば、市だと思います。 Jリーグのホームタウンの概念は府ではありません。 府は北から南まで全てをバランスよく考えなければなりません。 しかし、現実的には財政上の問題から、府と市が協調して動かなければならないでしょう。

大倉
建設後のスタジアムの運営は、行政か第3セクターに任せるのが良いと思います。

会場
昨年は招待券が多く配布されていました。 子供をスタジアムに連れてくれば親も来るので、スタジアムに行く敷居を低くして、 もっと足を運びやすくして欲しい。
また、サンガタウンへのアクセスが悪いのも困る。 アクセスがよければ、サポーターにもっとさまざまな面白い面を見てもらえるので、 興味を持ってもらえると思います。

柱谷
子供にはもっと観てもらいたいと考えています。 スペインバスク地方のクラブ、アスレチック・ビルバオでは、12面コートの練習場に子供から老人まで 集まってくる。そういうクラブにしたいです。


横山
最後に一言ずつコメントを頂きたいと思います。

真山
サッカー好きやサンガサポーターの内輪の盛り上がりだけではダメ。 それだけでは政治の流れは生み出せません。 経済効果や文化・国際性への貢献などの面で、もっと論理を構築していく必要があるでしょう。 誰かが引っ張って流れを生み出し、政治家を動かさなければなりません。

大倉
スタジアムを毎回満員にするための努力が必要だと思います。

柱谷 選手ではなく、クラブそのものを愛してくれる人をたくさん作ることが必要だと考えています。

横山
スポーツは、時間やお金に余裕のある人がするものという認識ではなく、 もっと生活に根付いた優先度の高い存在になっていけばいいと思います。

以上